振り向くと、大きな翼を持った、大型の猛禽類!!!!!
ふみゃあぁぁあぁっ!!!  ドッキーン!!
怖い、 怖い! 怖いぃ――っ!!
白目がオレンジ色!!   いや、当たり前か・・・猛禽類だから・・・




鋭いくちばし・・・尖った爪!!   背中が物凄く熱い!! 焼け付くように熱い!!
あぁ、そうか・・・爪が皮膚に食い込んでいるんだ・・・




僕、この鳥に食べられちゃうの?!・・・嫌だ、嫌だ!! 放してよ バカァ―――!!
死に物狂いで暴れた・・・冗談じゃない!! こんな所で、負けてたまるもんか!!

イヤァ―――っ!!
目を、きつくつぶって、全身に力を込めて ありったけの力を、外に向かって放出した!!!




肌に、ひげに触れる風に、ビックリして目を開けた!!
僕の周りに風が急激に集まり、渦を巻く・・・

僕を中心に荒れ狂う風に、大型の猛禽類は、僕を掴む力を抜いた・・・
巻き込まれちゃ かなわないとでも いうように・・・




食い込んだ爪は、なかなか外れなかった・・・
足を振って、僕を振り落とそうと しているみたいだけど・・・目が回る・・・
そんなに振らないでよ・・・ 気持ち悪い・・・ 酔っちゃうよ・・・ 吐きそう!!




僕を捕まえながら 右往左往して・・・上へと登っていく
下に緑が見えた・・・赤い岩山・・・・・・赤い土・・・草原・・・




僕を振り落とすように、思いっきり揺さぶられて・・・背中に強烈な痛みが、僕を襲う!!
痛みの激しさで、意識を失いかける・・・
ひぃっ!! イヤァ―――っ!! 意識を集中させて、全力で外に向かって放出した!!
荒れ狂う風が、大型の猛禽類に襲い掛かった!!




ようやく、食い込んでいた爪が外れたのか、落下していった・・・
背中が燃えるように熱い・・・
僕の周りの荒れ狂う風は、落下スピードを抑えてくれて、徐々にスピードが治まり、
ゆっくりと空中に留まって浮かんだ。
落下はしない・・・空中に留まっている・・・  し、下に降りなくちゃ・・・僕・・・  下へ・・・




くるくると回転しながら下へ落ちていく・・・
僕の周りの風が一段と強くなり視界を閉ざす・・・見えない・・・




吹き荒れる風の音しか聞こえない・・・
熱い・・・気持ちが悪い・・・  熱い・・・誰か・・・助けて・・・  誰か・・・マオ・・・マ・・・オ・・・




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・・・・・・・っ・・・痛っ・・・な、何?  ・・・痛っ・・・う・・・ん?・・・
舐められてる・・・痛っ・・・  なんだか、いっぱい舐められてる・・・
だ、だから・・・そこっ・・・痛っ・・・  全身舐められている・・・・・・はっ!!!



目を開けると、真っ黒な影が見えた。 ドキィッ!!
逆光で顔見えない・・・
でも・・・この匂い・・・どこかで・・・・・・っ・・・マオ?





「みゃぉ、みゃぁっ☆(マオ? マオでしょ)」
「気が付いたか、チビスケ・・・ったく お前は、心配かけやがって」




「みゃぉっ、ふみゃっ!!☆(怖かったよぉ!! 僕)」
起き上がろうとして、背中に強烈な痛みが走る!!




「まだ、動くな・・・こんな酷い怪我して・・・じっとしてろ」
僕を銜えると、マオは慎重にゆっくりと歩き出した。




「ふみゃぁあっ☆(痛っ・・・痛いよぉ!!)」
ズキン ズキン! ズキン!! 痛みが脈打つ・・・ひょぇぇ――っ!! やだぁ!


大猫さん達が、僕等を覗うように 体を低くして草の陰から見ていたらしい・・・
「マオ、そのチビスケが まさか・・・さっき獣人か」
「マジかよ、さっきの風球・・・チビスケが起こしたのか」




風球??・・・何だそれ・・・  風の球ねぇ・・・ん?
それって・・・もしかして、僕を護ってくれた  荒れ狂う風の固まりの事かな・・・
獣人??  僕の近くに獣人さん居たっけ??  僕が気付かなかっただけかな・・・




僕を運んでいるからか・・・マオは答えない・・・
いや、一旦降ろしてしまうと、また僕が痛いっていうからかな・・・
きっと、怪我を気遣ってくれてるんだ。 マオ・・・



「みゅっ☆(・・・なんか・・・べとべとする・・・気持ち悪い・・・)」




すっと、マオは立ち止まり、僕を降ろすと・・・背中の傷を舐め出した・・・
あ・・・そうか、べとついたのは、僕の血か・・・
なんだか、マオ・・・お兄ちゃんみたい・・・  嬉しい♪


「みゃぁぉ、みゃぁっ☆(気持ちいい・・・ありがとう、マオ)」




僕の顔を舐めた・・・クスグッタイ。 マオ・・・




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キルはマオより、ずっと大きかったな・・・顔も、舌も。  やっぱり成獣人とは違うんだな。


「チビスケ・・・ お前は本当に運が良いよ・・・ 普通、Level1で鳥人に捕まったら、逃げられないモンだぞ・・・」




「みゃっ、みゃぁっ☆(最初は、小鳥さんに会ったんだ・・・それが鳥人で、追いかけられて)」
「ん?・・・あぁ」




「みゃんっ、みゅっ、みゃぁお☆(青い木の いっぱい生えた地底の泉を上に、出口があって、そこから赤い空間に飛び降りたら、大きな猛禽類に捕まって)」




「あ?・・・お前、それ・・・  いや、なんでもない・・・  そうか、チビスケ大変だったな」
どうしよう・・・マオに呆れられてしまった・・・ガーン




「マオ!!・・・・・・っ・・・お前、何やってんだ!! おい、マオ!! お前、自分のやってる事わかってるのか・・・ 自分以外の血を舐めるなんて」




大猫さん達が近付いてきて、マオが僕の体を舐めているのを発見し、かなり動揺している。
・・・何で?! 何かあるの?
成人する前に、自分以外の血を舐めるって・・・何か意味があるの?
僕は、物凄く不安になった。

だって・・・僕、いっぱいマオに舐めてもらったんだもん。
だからこそ、意識を取り戻せたんだ・・・と思う。


「・・・・・」
マオは声のする方を振り向いた・・・ニヤッと笑ったように見えた・・・えっ?? 何?




「成獣人でもない 俺達が、そんな事するのは・・・」
「黙ってろ!!  このチビスケを、俺の巣穴に連れて行く・・・キルには、そう伝えてくれ。 とにかく怪我が酷くて、保猫園には連れて行けない いいな」

他の大猫さん達の動揺をよそに、落ち着いた声でしっかりと言った。




「おい、マオ・・・本気か?  本気で そのチビスケを・・・」
「キルに連絡してくれ・・・頼んだぞ。 あと、空の監視も頼む 今日は鳥人が多すぎる・・・何かあるぞ きっと」

そういうと、マオは僕を銜えて また歩き出した。




えっ? マオの巣穴って言った? 今・・・  ドキッ!!
な、なんか・・・ドキドキ。


えっと・・・巣穴って・・・
あはは(汗)  そんな深い意味は無いでしょ・・・うん。
でも、さっきの大猫さんの言葉も、気になるんですけど・・・意味深そうで・・・
変に勘ぐりいれちゃうじゃん・・・





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マオに頼まれた大猫さんは、くるりと後ろを向くと走り出した。
あっちが保猫園のある方向なんだろうか・・・


ふと、空を見上げた・・・・・・っ・・・あの大きな猛禽類の様な影が、3つ旋回している!!
「ふみゃぁっ☆(あの大きな猛禽類が3羽もいる)」
「あぁ、さっき急に出てきたんだ。 何かあったのかもしれないな いつもはこんなに多くない」


マオは、いったん僕を降ろして空を見上げた。 上空を睨んでいるようにもみえた。


「さて、行くか チビスケ」
僕を銜えてマオは移動し始めた。



保猫園のある方とは別の岩山に登っていく・・・
やっぱり、赤い岩山だ・・・
小さめの穴が空いている・・・




マオは僕を降ろして、穴に押し込む・・・えっ・・・ここに入るの?
痛みを こらえながら、僕は一歩、また一歩と進んだ。


マオも這いつくばって中に入ってくる。
少し奥に行くと、立ち上がれる広さになった。


「干草の上に座れ、チビスケ」
「みゃっ☆(うん)」



僕は、ふかふかの干草の上に座った・・・ていうか  横たわった。
体を寝かせてないと辛いんだ、僕。




マオは僕の傍に寝転んだ・・・僕の体を舐めている・・・
傷口にマオの ざらざらとした舌が痛い!
でも・・・気持ちいい・・・痛いけど・・・気持ちいい・・・
なんだか僕・・・  眠い・・・  マオ・・・僕、眠い・・・  あふっ。




ん? 明るくなった・・・  何で?
あっ・・・僕の体が・・・  青白く発光してるんだ・・・ でも何で?
眩しくて目をつぶった・・・う・・・ん・・・眠いや・・・  後で・・・  考えよう・・・




「みゃぁ〜☆(僕 眠いの・・・ マオ・・・ 僕 寝ていい)」
「・・・・・・っ・・・あぁ、ゆっくり眠れ。 ここは俺しか居ないから 安心しろ、チビスケ」




『 空に気をつけるんだよ 』 って言われてたのに
キルに怒られちゃうかな・・・ 僕・・・ 何て言って謝ろうか・・・




ふかふかの干草の上・・・マオが近くに居る安心感か・・・僕は意識を手放した・・・





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チビスケの体が青白く発光し、
先程 風球の中に居た獣人の姿に 徐々に変化していく・・・
まったく、何て奴だ・・・ チビスケお前は・・・ 誰だ?




この雄天原に降り、獣人となれば、人間界で培った能力は 薄れていくのに・・・
俺の後継者に・・・このチビスケに当てはまる能力者は、居なかったはず・・・




俺の後は確か・・・ 海斗・・・ 海斗の魂とも違う・・・


『 風使い 』 の能力者で・・・ うーん・・・
後継者以外で、ずば抜けていたのは、『 風覡のジョー 』 位だ・・・
だが、ジョーの魂とも違う・・・


後は、そうだな・・・ ウィンディーネのマチか・・・
だが、マチとも違う・・・




このチビスケは、再生を一度もしていない魂だ・・・
それは感じとる事が出来る。

風の能力が、使える・・・って事は、例え俺が 知らない魂でも・・・
俺の親類縁者って事になる・・・

ならば・・・かつて 『 風のTOP 』 であった俺が、面倒をみるのは当たり前だ。




濃紺の髪に真っ白な肌・・・
痛々しく背中に傷跡が・・・出血は止まった様だな。

少年の様な 幼さを残す横顔・・・
淡い桜色の頬・・・  ふっくらとした唇・・・
濃紺の長いまつげ・・・
小ぶりの尻からのびる すっと長い尻尾・・・

なんと繊細で、美しい体躯なんだろう・・・
清楚でいて艶やかな美しさに、ゾクゾクする。
この危うい魅力的な獣人を、他の猫などに見せれるものか!!
俺が護ってやらなければ・・・  俺の縁者なのだから。




能力を大量に使った結果だろう・・・
子猫の時の、体毛の・・・・・薄い青と濃紺の縞模様から、
黒に近い濃紺と黒の縞模様に変化していた。
遠くからでは、もう黒猫に見えるだろう。




そして、今は・・・  成獣人とまでは いかないまでも、
俺と同じLevelの変身能力だなんて。

本当に 『 Level 1 』 なのかよ・・・ ありえないぜ・・・
俺でさえ、このLevelになるまでに、随分と時間がかかったっていうのに。
どんだけ潜在能力値が高いんだよ!!




俺達、中猫校のLevelになると、意識を失ったり 眠ってしまったりすると、
獣人に変化するんだ・・・
だからこそ、一体、一体 別々の巣穴に住む・・・
無防備な獣人の体を、他の獣人に見られないように・・・




無意識にチビスケに近付き、匂いを確かめた。
なんと香しい・・・
・・・・・・・・っ・・・ばかな!!
俺は、このチビスケを護るんだ!



決して 『 欲しい 』 んじゃない。
生まれたばかりの・・・・・・このチビスケに、欲情してどうする!!
パートナーとして・・・欲しいなんて、思ってはいけない。





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俺は、自らを戒めるために、一旦巣穴から外へ出ると、
大鳥・・・成鳥人が、黒い風の様に群れを成して、
保猫園と小猫校のある岩山の方へ飛んで行くのが見えた!!

「な、なにぃ!!  キル! カズ!!」
俺は夢中で走り出した!




中猫校の猫達も、ほとんどが保猫園と小猫校共通の庭園内に入り、鳥人達と戦っていた。
キルとカズは、二分の一程度まで減ってしまった子猫たちを、
保猫園内に固まらせて護っている。




「キル! 何があった!」
「マオ! 来てくれたのですね ありがとう  でも・・・アヤと一緒に居たのではないのですか」




獣人化し、足に怪我を負い、血が流れているのが見えた。
カズがキルの手当てをしていた。




「アヤ?  あのチビスケはアヤって言うのか・・・  あぁ、アヤは俺の巣穴で寝ているよ、キル」
ようやくあのチビスケの名がわかった。 アヤねぇ・・・




俺の知り合いには、そんな名前をした人間は、やはり居ないな・・・
どういう関係の奴なんだ・・・気になる。 やはり気になる。




「いつもの様に、庭園で子供達を遊ばせていたら、急に鳥人達が子猫達を襲い始めたんだ。 白猫や、白が入った柄猫が狙われている・・・他の子猫は襲われていない」
カズがキルの手当てを終えて、俺に振り向いた。




「白系が・・・・・・っ・・・おい、まさか!! 水龍神のエナジーが、狙われてるのか」
「・・・・・・・その様だ。 人間界で修験者が現れたんだろう。  龍神乱世期に突入ってわけだ」
苦虫を噛み潰した様な表情で、カズが呟いた。




「アヤは、白い柄と間違われて襲われたのでしょう・・・可哀想に。  怪我は酷いのですかマオ」

キルは素早く人型に戻る・・・震えている子猫達を、数匹ずつ自分の膝に乗せ、なだめ始めた。




「あぁ・・・風の能力を出し切って、今は濃紺と黒の柄に変化したよ。  出血が酷くてな・・・なぁキル。  アヤは何者なんだ?  ありえねぇ位の潜在能力値だ。  アヤは今、獣人型で寝てるんだ」




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マオは、保猫園の保猫室で鳥人達に襲われて、固まって護っていたキルとカズに、
疑問をぶつけた。 本当に戸惑う・・・
風球の中から 現れた獣人にもビックリしたが、


みるみる子猫の姿に戻った時、
色が違っていたが、特徴のある尻の柄と、その雰囲気で、
俺の知っている チビスケだとわかった。


なぜ、風球を使う事が出来るんだ・・・ 俺でさえ、能力が半減して、
猫の姿では小猫校の途中から でなければ使えなかった風球だ!!
『 風のTOP 』 だった俺が・・・・・・だ!!
なぜ、俺の知らない魂が、俺より能力値が高いのか!



「・・・・・・っ・・・獣人型で・・・ですか。  Level1なのに・・・」


キルの表情が微妙に引きつる・・・美しいだけに、そんな顔されると・・・なぁ。
考え込む様に・・・うつむいてしまった・・・おいおい。




俺に教えようか どうしようかって・・・感じに受け取れるぞ、それは・・・
知ってるなら、教えてくれよ。




俺、アヤに対してどう対応すべきか・・・態度を決めかねてるんだぜ 本当に。
このままだと・・・マジ・・・俺の物にしたくなる・・・




アヤのパートナーが居ないのなら俺が・・・
いや、居るんだろう・・・あんなに、魅力的な奴を 放っておく奴が居るものか!!
何処かに居て、アヤが再生し終わるのを、待っているんだろう。




魂の融合をしたくなる様な・・・そんな相手に、めぐり合える率は、本当に少ない・・・




「だからっ、アヤは何者なんだって聞いてる!  風球を使えるし、眠る時獣人型で・・・って再生が初めての魂のはずなのに、能力値が 高過ぎるだろ」




「知らない魂に、十八番を取られて、ご機嫌斜めのマオちゃんか・・・くくっ」
カズが俺を茶化す・・・何言ってやがる!! そうじゃなくて・・・




「そうじゃないって!!  俺は、機嫌が悪いんじゃない!!  誤解スンナよ」
「・・・っ・・・マオ、アヤに惚れたのですか?」




キルは瞬きして俺を見詰めた・・・うっ、その目は何だ、その目は!!
いたいけな、子供を誘惑して! みたいな目は!!


どっちかっていうと、誘惑されているのは俺の方だ!!
も、もちろん・・・本人には自覚が、ないんだろうけど・・・


うっ・・・やっぱり・・・その場合は・・・俺が悪くなる・・・んだよなぁ・・・




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「じょ、冗談だろ そうじゃないキル!!」
「ほぉ・・・惚れたのか、マオ ようやく春か」




カズまで、止めろヨォ・・・
キルもカズも・・・いつも一緒に居るから良いだろうけどなぁ。
俺の人間界の時のパートナーは、喰われちまったんだぞ・・・あいつ等に!!
くそっ!!




俺と同じ 『 ここ 』 に落ちてくれば、俺が護れたのに・・・
よりによって、犬になりやがって・・・挙句の果て、鳥人に喰われて・・・
俺が再生しても、もう二度と会えないんだぜ・・・
だから、最初から捜さないといけないんだ・・・気が重いぜ。




「ちが〜〜〜う!!!」
俺の話を聞けっ!! からかってんじゃねぇよ!!
確かに、アヤに惹かれる・・・ それは認めるけどよ・・・ だからって・・・




ドヤドヤと、中猫校の仲間達が庭園から戻ってきた。
「やれやれ・・・とりあえず終わったよ。 あれ? マオ アヤは?」
「巣穴で寝てる」




俺は疲れた・・・マジ疲れた。  マオは溜息を付いた。
・・・でも、はっきりした事 聞かないと・・・このままじゃ帰れない。
襲っちまいそうで怖い・・・  俺、相当やばいんだ。




「お疲れ様みんな・・・鳥達は引き上げたのですか」
キルは庭園から戻って来た、中猫校の戦士(?)達に労いの言葉をかけた。


「あぁ・・・残った白系は何匹だ?」
その中の一匹、茶トラのコウ=ネロパスは、前足に受けた傷を舐めながら、聞く。
大柄で、大胆な性格のボス的な存在だ。 白猫のナギと両端で頭を張っている。



「・・・・・・保猫園は、5匹です」
「小猫校は6匹だ」



中猫校教猫師のダイ=ネオリヌスが、一番最後に入って来た。
ブルーグレーのしなやかな体付きからは 想像できないかもしれないが、
『 向かう所敵なし 』 の俺の憧れの先生だ。

「随分やられたな・・・カズ」
「あぁ・・・ダイ、やんちゃな奴ばかり持ってかれた 将来楽しみだったんだが・・・」



自慢の純白の長毛を舐めながら、ナギ=ネポースは言った。
「あいつ等、僕まで持っていこうとしたんだよ!! 失礼しちゃう!!」
「ナギ、何羽しとめたの? ただじゃ返さなかったんでしょ」


「もちろんよ、ダイ先生!! 5羽。 僕を喰おうなんて、許さないんだから!!」



あぁ・・・まぁ、ナギなら・・・・・ 挑戦したくなる気も わかるような気がする。
ナギは俺の目から見ても美猫に見えるし・・・
中猫校の中でも、ナギはトップクラス・・・光る石も7つ獲得しているし。
鳥人の奴・・・無謀と思うけど挑戦したかったんだろうさ・・・



「あら、マオ 来てたの? だったら参加すれば良かったのに」
「ふふっ、僕 知ってるぅ♪  マオは色気付いたのよ ダイ先生!」




げげっ!! 何で、ナギが知ってる!!
ナギは、おしゃべり好きだから、俺は気を付けていたのに。
あの時ナギは居なかったはず、匂いしなかったし。
俺の周りには・・・良くつるんでいる奴等しか、居なかったはず。
何で知ってるんだ・・・俺が、アヤを連れ帰った事・・・




「あら、あらあらっ本当? いつの間にぃ〜 誰よ、誰? マオのハートを盗んだのは」
「なっ!! 違うって!! こら、ナギ余計な事を・・・ダイ先生も、本気にしないでくださいよ!」



まずい・・・マジまずい!!  この分だと、この地域に知れ渡るのは時間の問題だ。
止してくれよ・・・ アヤが何て思う。 可哀想だろ。

俺みたいな、 ガサツな獣人の思われ猫だ  なんてわかったら・・・アヤが逃げるだろ。
いや・・・もしかしたら・・・俺を受け入れてくれるかも・・・
・・・・・・っ・・・バカな事を。
そんなんじゃない、俺はそんな事・・・


「あらっ、隠す事ないじゃな〜い♪ みんな噂してたわよぉ、マオに とうとう春が来たって」
「じょ、冗談!! 誰だ そんな事、言いふらしている奴は!!」




そ〜〜〜〜っと、俺の後ろから 逃げ出す様な気配が・・・
大柄な、その体躯を そ〜〜〜っと何て 無理だろう・・・この野郎は!!
「コ・ウ?!」




ビクッと体を 飛びのかせて・・・一目散に駈け出していく!
「お前か――――っ!!」




俺はコウを追いかけた、悪戯が過ぎる!! 許さん!!
いつも つるんでいる親友に 俺は腹を立てた。
いや、親友と思ったからこそ、信じたのに、言いふらすなんて!!




その場にドッと笑いが起こった。
俺の苦労も知らないで!!
どんな思いで耐えているのか、お前らに わかるかぁ!! くそっ!!



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う、ん?
ぞくっ として目覚めた・・・

どこ?
ここは・・・
薄暗い・・・


何度か瞬きすると目が慣れたのか、周りが見えるようになった。
洞穴?・・・あっ!! マオ・・・マオはどこ?!




「みゃぉ、みゃぁ―っ!!☆(マオ、 どこ?マオ―っ!!)」
僕の声が、洞穴内に響き渡る・・・




マオ、居ないのか・・・  どこへ行ったんだろう。
動こうとして、強烈な痛みが背中に走った。
・・・・・・っ・・・痛い!!




洞穴の入り口から薄明るい光が入ってきていた。
水滴が、吹き込んできていた。
雨?! かな・・・




僕は、痛みをこらえながら、ゆっくりと起き上がり、入り口に向かって歩いた。
洞穴の入り口から見える景色に驚いた。
紫色の空から降り注ぐ雨は、ピンク色だった。




ピンク色の雨に打たれて、森は揺れ、花を付けていなかった大きな木が、
大きなオレンジ色の花々を次々と咲かせ続け、森がオレンジ色に染まる・・・
草原は、ピンク色の雨に打たれ、輝いて・・・淡い赤色の海原に見える。




す、すごい・・・
しばし光景に見惚れていた。




通り雨だったらしく、しばらくして雨が止み・・・
水色の雲の間から眩しい光が降り注ぐ。
彼方此方で虹がかかる。




太陽の光が異様に強い・・・熱い・・・
肌が、じりじりと焼かれる感覚・・・
あ、違うか・・・毛皮がじりじりと焼ける感覚・・・か。




紫色した空から何かがフワフワと漂いながら、透明な何かが下に降りてくる!!
あれは、何? 輪郭だけはっきりと見える・・・あっ!
・・・・・・・・っ・・・もしかして!!


魂かも!!


森や草原に降りてくる・・・あっ!! 川に落ちるのもいっぱいある!!
ちょっと!! あれって、ユカイ川ジャン・・・
ユカイ川に落ちると水に囚われてしまうって言ってってたよね・・・ガーン!!




僕は焦った。 せっかくこの雄天原に再生するために降りてきても、
囚われてしまったら、再生への道は閉ざされてしまうって聞かされていたから。




僕にだって、きっと出来る!  生まれる前に消滅してしまうのを防げる!!
外へ出ようとした・・・・・・・・・・っ・・・痛い!!
強烈な痛みが体を駆け巡り、体を支えられずに、床に打ち付けた・・・・っ・・・痛い!!
床に体をぶつけた振動で、傷口に響いた。




ううっ・・・僕にはまだ無理みたいだ・・・あきらめるしかない。
ここは岩山の中腹にある洞穴・・・
見えてるのに・・・消えていく魂が目の前で見えてるのに!!
力不足を思い知らされた・・・




ここを降りて、草原や森を経て、ユカイ川に辿り着く体力がないだろう。
新しい猫化した魂を運ぶのは、中猫校の生徒達の仕事だって言ってたし。
きっと、みんな手分けして、新しい命を運ぶために奔走しているんだろうな。
マオも、きっと・・・忙しいんだ。




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光を浴びて、キラキラと輝きながら水蒸気が、彼方此方から天に向かって上がっていく。
・・・綺麗・・・  アヤは洞窟の入り口から、じっとその様子を見詰めていた。
バニラの様な甘い香りが漂って・・・心地よい風が顔を撫でる・・・


急に眠気がして・・・うとうとした。
あふっ! 眠い・・・ あ・・・戻らなきゃ・・・
干草の上に・・・ あふっ・・・ 眠い・・・
ゆっくりと立ち上がり、何とか歩いて ようやく干草の上に寝転がる事が出来た。
マオ、早く帰ってこないかなぁ・・・あふっ!!




いつの間にか寝てしまった様で・・・顔に何かが触れている・・・
・・・っ・・・くしゅんっ!
くしゅんっ!  くしゅんっ!
花粉症?!  僕、花粉症はなかったはずだけどな・・・
涙が目に滲んだ・・・うーん・・・前足と後ろ足を思いっきり伸ばした。
ずきっ!と背中に痛みが走る。




瞬きすると・・・僕の目の前にぼやけた・・・何かがある・・・
僕の鼻の上?  ・・・蝶々だ!!
僕が、くしゃみをするたび・・・ひらひらと羽ばたき・・・そしてまた、僕の鼻の上に停まる!
くしゅんっ!! ひらひら・・・
僕、くしゃみでるから・・・そこに停まんないで欲しいなぁ・・・



「みゃぁっ、みゃあぉっ☆(蝶々さん・・・僕の鼻の上に停まらないで、むずむずするから)」


ひらひらひら・・・またぁ・・・なんで僕の鼻の上・・・
前足で、鼻をこすると、ひらひらと今度は僕の耳の辺りに停まった感触がした。
ぞくっ・・・なんか、変な感じ・・・結構耳って敏感だったりする・・・



入り口から、数匹の蝶々が入って来た。
蛍光色のオレンジ色とピンク色だ・・・僕の頭の上に乗っているのは水色の蝶々・・・
みな黒い縁取りがあった。
ひらひらと僕の周りを飛び回り、次々と僕の体の上に停まった。




・・・・・・っ・・・これ、蝶々なんだよね?
まさかとは思うけど、人間界に居る蚊の様に、卵を産み付けたりはしない・・・よね・・・
ちょっと不安になる。
まぁ、刺されたりとか痛い事はされていないけど・・・
なんで、僕にくっ付くんだろ。




僕は蝶々を前足で払いのけたり、後ろ足で、体をかいて、追い払ったり・・・
噛み付く様にしてみたりして、遊んだ。
でも、一向に僕から離れようとしない蝶々さん・・・
・・・疲れたぁ・・・
僕は、ふかふかの干草の上に寝転んだ・・・眠い・・・
何でこんなに眠いのかなぁ・・・



春の陽の光が、ぽかぽかとしてるんだったら・・・眠くてもわかるんだけど・・・
そういえば、ここって季節とか あるのかなぁ?
春の陽気に似てるなぁ・・・ 日なたは寒くないし・・・
蝶々は、飛んでるし・・・ 虫もこの世界にいるんだ・・・ふーん。
虫も、雄しかいないのかな?



マオに後で聞いてみようっと。
うとうとと、目蓋が閉じた。





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お尻のあたりが変・・・もぞもぞする・・・嫌だ・・・
何?・・・なんか変・・・ 変な感触・・・ なんだろ・・・
ちょっと、嫌・・・誰!
僕のお尻の周辺を・・・異様に舐められているような感覚・・・
僕に触らないで・・・
嫌だ・・・やだったら・・・う・・・ん・・・




ゆっくりと、重い目蓋を上げ、振り返ると・・・
ぼんやりと、何かが見えるんだけど・・・良く分からない。
時間の経過は感じられない・・・洞穴の中は薄暗い。
何度か瞬きして、輪郭がはっきりした・・・
でも、マオじゃない!!




聞き覚えのない声が聞こえた。
「ちっ! 気が付いたのか・・・美猫ちゃん。 俺のモノになれよ」
「みゃっ、みゃぁっ☆(誰? 誰よ、 マオどこ?)」




急いで、入り口の方に這いずって逃げ出した。
そのまま、外へ出ようとしたら、踏み潰された!!
お、おも―――っい!! 呼吸が出来ない・・・苦しい・・・




痛い・・・足が乗っている場所が・・・
ちょうど、大鳥さんに付けられてた傷口の場所だった!!
いやぁ――――っ!!


どうしても我慢できなくて、きつく目をつぶって・・・
体に残っているエネルギーを外に向かって放出した!!
僕に出来るのは、それ位しかなかったから・・・




僕の体の周りに風が巻き起こり・・・小さな洞穴に充満し、
風と共に細かい砂埃や干草が巻き上がる・・・
「うわっ!!」




押さえつけていた奴は たまらず、僕に乗せた足を退かし・・・
僕は勢いづいて、洞穴の出口から外に転がり出た・・・
掴まったら大変だ!!
恐々、僕は足元を確かめながら岩山を降り始めた。


「待て!! 待つんだ!! このチビ猫め!!」


マオの巣穴を振り向くと・・・
怒りの形相で、巣穴から出てきたのは・・・
大きな犬!! ・・・・・・ひっ・・・い、犬!!
目に砂埃が入ってしまったらしく、硬く目を瞑っている。



に、逃げなきゃ!!
な、なに・・・この犬・・・  僕に何しようって言うの?  こっちに来ないで!!
ゆっくりと、僕に近付いてくる・・・じょ、冗談でしょ!!
僕は、再び降り始めた・・・犬は、目が見えない状態・・・何とか逃げ切れるかも!!




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大きな犬から逃げようと僕は必死になって岩場を降りる。

背中の傷が疼く。
足に段々力が入らなくなって来た・・・
意識が・・・朦朧とする・・・
や、やだ!! こんな所で・・・ 力尽きるなんて!!




犬が すぐそこまで、追いつかれた気配がする!!
あと、もう少しで草原に降り立てるのに・・・
頑張らなきゃ・・・僕、後もう少しなのに!!
あと数メートルで降り立てる・・・僕は思い切って飛び降りた!!
瞬間、首の後ろをムンズと掴まれ、上昇し始めた!!!!
「ふみゃぁあぁぁ――――っ!!!」




バサッバサッと羽音がする!!げげっ!! 鳥?!
めまいが、する・・・
マオ! マオ!! マオ!!!
助けて!! 助けて!! マオ!!



草原には、大きな犬が数匹いた。 白と茶と黒と・・・ミックス・・・
犬だよなぁ・・・あれは・・・うん。



草原の向こう・・・保猫園のある赤い岩山の方から、
凄いスピードでこちらへ移動している物体がある。 茶色と黒・・・
黒の方・・・マオに似ている気がする・・・僕は叫んだ!!
「みゃっ、みゃあぁおぉ―――っ!!!☆(助けて!! 助けて!! マオ!!)」



その黒猫は、上を見上げて 僕と目が合った。
途端に形相が変化して・・・走るスピードが増す・・・

「くそっ!!  アヤァ―――っ!!!」




あれっ、マオ 僕の事、あやって呼んでくれてる!!
嬉しい♪ マオ・・・  あ、それどころじゃないや・・・
この状況は、物凄くやばいって!!

「みゃお―っ、みゃぁあっ☆(マオ―っ!! マオ助けてぇ!!)」




僕を捕まえている奴は、更に上昇した!!
首の後ろを掴まれていて・・・僕は首を動かす事 出来ないんだけど・・・
変じゃない?  これ・・・



・・・なんで急に鳥さんに捕まったんだろう?
僕、大きな犬に追いかけられていたのに・・・



嫌だ!!  僕を放してよ!!
僕、マオの所に戻るんだから!!
暴れようとしても、なかなか力が思うように入らなかった。
吐き気をもよおして、何度か嘔吐した。
気持ち悪い・・・心臓の音が、やけに大きく聞こえてくる・・・




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目が回る・・・呼吸が苦しい・・・やだ、嫌だぁ!!
離して、僕を放して!! 離してよぉ!!
思いっきり前後の足を動かして蹴飛ばした、
でも・・・空を蹴る位しか出来なくて・・・




悔しくて悔しくて、目に涙が滲む。
僕はこんな所で、諦める訳にはいかない!
必ず再生しなきゃ、僕は約束したんだ。
城と約束したんだから!!




必ず再生して戻ってくるって・・・
ヒロちゃんのためにも、諦めちゃいけない!!
僕自身のためにも、負けない  僕 負けないんだから!!




目をキツクつぶって
僕はイメージした・・・
マオが風球って言っていた 僕を護ってくれる風を・・・
体は、くたくた・・・ 体中が痛いし、力なんてもう入らない。
でも、僕は諦めないよ・・・




諦めたら・・・そこでジ・エンドだもん。
やり直す事なんて出来ないのなら、
最後の最後まで諦めずに、悪あがきスルッキャない!!
最後の一瞬まで 気を抜かないで、あがいてやろうじゃない!!
それが僕なんだから!




城と約束したんだ、 もう二度と自殺なんて考えないって・・・
自ら命を絶とうなんて考えないって・・・
最後のその一瞬まで・・・  悪あがきしてでも、生き残る努力を惜しまないって・・・
あの雪山の山荘で・・・  僕を追いかけて全身汗だくになって僕を止めてくれた城・・・
僕を最愛の妻だって言ってくれたんだ・・・
約束は守る・・・僕は、必ず守る・・・  全てをかけて・・・僕の魂が消滅するまで・・・




僕はイメージした・・・
体の中から熱いものが徐々に集まってくる・・・ 熱い血潮?・・・ううん違う。
この感覚・・・熱い・・・凄く熱い・・・ 脈が速くなる・・・コメカミがズキズキと痛む。
僕、負けないよ!!
かっと目を見開き、それと同時に、体の熱を外側に向かって放出した!!




僕の周りの空気に 色が付いた様に見えた。
色の付いた空気は 周りの空気を巻き込み・・・
どんどん集まり吸い込んで、風を作り出していく・・・
あ・・・ 風が・・・
徐々に強くなり・・・ あの時と同じ様な風の固まりになった。




「うわっ!! な、なんだこりゃぁっ!!」
僕を銜えて拘束していた そいつは、叫んだ!!
僕の周りに集まった荒れ狂う風に煽られて、上手く飛行する事が出来ないらしい。






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同時に降下し始め、離された途端、僕の周りに風の結界が・・・
僕は・・・早くその場を離れたかった。
上を見上げると・・・何あれ・・・羽が生えた犬に見える・・・
羽の生えた犬ぅ!!  そんなの居るのか・・・おばけ??




いや、神話とかに出てくる動物で・・・似た様なのを見た様な気がするけど・・・まさかね。
ここ、神話の世界じゃないモン・・・
うん。 きっと違うよね。
雄天原って言ってたし・・・  確か日本の神話に出てくるのは高天原・・・
全然言葉の響きが違うモン・・・




下へ降りなきゃ・・・  マオの所へ戻らなきゃ・・・
僕は、ゆっくりと下を目指した・・・
急に・・・何処かへ引っ張られるような感覚・・・えっ??
振り返ると・・・マオ!!
マオが、風を操って・・・僕を引き寄せてくれていた!!




「みゃぁぉっ、みゃぁっ☆(マオ!! マオ!!)」
僕はマオに抱きついた・・・いや、飛びついた。



「アヤっ!! 大丈夫か? 怪我は・・・  傷口が開いているな・・・無茶しやがって、まったく」




マオは、僕を優しく草むらに降ろすと、僕の顔を舐めた。
僕・・・痛いのと安心したのと・・・体がだるいのとで、うとうとする。





僕を銜えると、ゆっくり岩山へ登っていく・・・
マオの巣穴に入って・・・目を見張り溜息を付いたマオは、
入り口の傍に僕を降ろすと、中を掃除し始めた。
すっかり綺麗にすると、マオは僕を優しく干草の上に寝かせてくれた。




僕の傷口を舐め始める・・・・・・・っ・・・痛!! 痛い・・・でも、嬉しい・・・マオありがとう。
「ごめんな、アヤ・・・ 俺が、ここを離れたから・・・ 怖い思いをさせて、ごめんな」


マオが謝る事なんてないのに・・・ マオお仕事だったんだし。
それに僕、何度もマオに助けてもらっているし。
僕一人ででも、危険を回避出来る様にならなきゃいけないだモン。
本当にマオって、お兄ちゃんみたいだ・・・僕、マオの傍だと凄く安心する。



「みゃっ、みゃぁっ☆(ううん、 マオ忙しかったんだもん 新しい命生まれたんだよね)」
「・・・・・・っ・・・あぁ、まぁ・・・な」
なんか、マオの様子が変だ・・・気のせいかなぁ・・・





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巣穴の中でマオは、干草の上の僕を抱え込みながら、寝そべっている。
僕の顔をしきりに舐めて・・・


「みゃぅっ、みゃぁっ☆(あの羽の生えた犬、なんで僕を捕まえようとしたのかな)」
「・・・・・・っ・・・あぁ、なんでだろうな・・・アヤが可愛くてかな・・・くすっ」




「みゃっ、みゃあっ☆(あははっ、変なのマオったら)」
「そうだ、アヤ。 キルからリボンを外すようにって伝言だ。 外すぞ」


そう言うと素早く僕のリボンを外した。
シャリンシャンと小鈴が鳴る・・・





「みゃ、みゃっ☆(りぼん没収? 僕・・・どうなっちゃうの?)」
僕が勝手な事したから、キル怒っちゃったんだろうか・・・どうしよう。



「没収? ぶっ!! アハハハっ、アヤ 何勘違いしてんだか知らないけど・・・そんなんじゃないよ。  進級だ。  本来なら、同じLevelの猫達と勉強しなきゃいけないんだけどな。  お前は、破天荒過ぎて・・・ 例外が認められたんだ」




「みゃぁっ☆(そ、そうなんだ)」
どくん! どくん! どくん!
急に発熱し僕は意識を失った。




アヤの体が発光し、徐々に その姿を大きく変えていく・・・
本当に、お前は・・・破天荒な奴だよ・・・アヤ=ネリオヌス。
風覡の城の最愛の妻・・・  龍覡の兄弟の母となるべき魂・・・か・・・




あれから俺は、キルにようやく聞き出せた。
そして、聞いた事を後悔した。
何も知らずに奪ってしまえば良かった。
俺の体の中に負の感情が渦巻く・・・  俺はアヤが欲しい・・・
頭を振って・・・思いを振り捨てた。




バカな事を!!  仮にも俺は風のTOPだった男だぞ!!
奪うなんて、それも・・・勝龍の暗示した龍覡の兄弟の母だぞ。
恥を知れ・・・  いくら、アヤが魅力的でも・・・だ!!
アヤに触れた皮膚から・・・熱い鼓動が伝わってくる。
誘惑に勝てそうに無くて・・・俺はアヤから身を離した。




リボンを外した衝撃で、アヤは意識を失ってしまった。
それはそうだよな、
リボンには魔力がある・・・流動する魂を固定させておくための必須アイテムだ。
リボンを外せば、その能力に応じて・・・変化してしまう。




龍神乱世に突入して、龍覡の兄弟の母の魂が狙われているんだと。
今のアヤ本来の姿にすべきだと・・・キルは決断を下したんだ。




アヤの潜在能力の高さには俺も脱帽するよ。
風球を何回使った?
俺でさえ、頻繁に使うと身がもたないのに・・・




光が治まり、アヤは中猫位の大きさになった。 もう縞は見当たらない真っ黒だ。
小猫校・・・『 Level 4 』 ってとこかな。
アヤが気が付いたらキルの所に送っていく。 あとは、先生方の判断だな。 うん。




けど・・・一挙に3級昇進って・・・前代未聞なんじゃないか?
まぁ、実践の方が技術が身に付くとは、昔から言われてるけどな。




それにしたって・・・
はぁ・・・キル、きっとがっかりするだろうな・・・
アヤを手放さなきゃいけないんだから。




まぁ・・・俺も、これ以上一緒にいたら・・・辛いだけだしな。
小猫校で、みんなと仲良く勉強してくれアヤ。




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暖かい・・・気持ち良い・・・マオ・・・マオ・・・マオお兄ちゃん・・・好き・・・
う・・・ん・・・まどろみながら、寝返りを打つ・・・背中を舐められている感触に・・・覚醒した。




「みゃ――っ んっ 朝?」
伸びをした・・・痛みは無かった・・・って言うよりなんか変だ・・・僕、体に力が漲っている。




「アヤ、おはよう・・・気分はどうだ? 気持ち悪くは無いか」
「みゃっ、大丈夫みゃ 気分爽快みゃぁ」
ん?・・・あれっ?  僕・・・言葉・・・変・・・言葉になってる!!




あれ程大きく思っていたマオが・・・ちょっと大きく感じる位だ・・・えっ?
「僕みゃ・・・大きゅく・・・なってるみゃ?」
「あぁ、  そうだアヤ  随分大きくなったな」




マオは苦笑している・・・
ガーンな、何で? 僕・・・どうしちゃったんだろ!!とっても不安!!




「これから、保猫園まで連れて行く・・・もちろん、アヤ自分で走れよ。 それからリボンを受け取るいいな」




「みゃっ、キル僕の事見てビックリするかみゃ・・・」
「くすっ、あぁ・・・そうだな」




マオは僕の顔をしきりに舐める・・・ くすぐったいよ・・・
マオ好き・・・僕、マオ好きだよ・・・


しばし、うっとりとしてしまった。
マオは・・・徐々に僕の上にのしかかって来る・・・


いつもより、真剣な表情に見えた・・・ん? どうしたのマオ?
これじゃ起きれないし・・・く、くすぐったい♪ みゃっ、みゃぁおっ♪




ぱっとマオが僕の上から退いた。 えっ?
「アヤ・・・そんな表情、他の奴等の前で すんなよ!! ダメだぞ・・・」




マオは怒ってるみたい・・・不安になった。 僕マオ怒らせたのかな・・・
「みゃんで? みゃんで怒ってんみょ? みゃお」
「怒ってない・・・  アヤ、怒ってるわけじゃない・・・ 心配なんだ俺は」




再度僕の顔を舐める・・・ 舐め方に愛を感じた・・・




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巣穴の中で、アヤはマオと戯れていた。

僕の事、家族の様に思ってくれてるんだ・・・
ちょっと切ない様な思いが、僕の胸を満たす。
僕も、マオの顔を舐めた・・・ 好き・・・好きだよ  マオ♪
優しい目付きだ・・・マオ・・・僕を見る目、とっても優しい・・・




「さぁ、行こう・・・アヤ キルが待ってる」
「みゃっ」
ゆっくりと、マオの巣穴から出ると、オレンジ色の朝の日差しが眩しかった。




岩山のごつごつは、あまり感じられなかった・・・あれれ・・・
あ、そうか・・・僕の体が大きくなったからか。


あれ程大変だった岩山の道が、そんなでもない・・・
なんとなく、寂しい様な気もした。
もう、マオが僕を銜えて 何処かへ連れて行ってくれる事は、無くなっちゃったんだ。
僕は もう生まれたての仔猫じゃない。 『 お兄ちゃん 』 になったんだ。




あれ程 長い距離に思えた道も、マオを追いながら走ったら、そんなに遠くは無かった。
もちろん、マオは走るスピードを、僕に合わせてくれてるんだけどさ。




途中 誰とも出会わずに、保猫園のある岩山に着いた。
赤い岩山を登っていく。
洞穴の入り口から中に入り・・・僕の足は止まった。




み、見えない。 真っ暗で怖い!!
躓き、僕の足が止まったのに気付いたマオが、引き返してきた。
僕の顔を舐め、また歩き出す・・・マオの尻尾が僕の頭にポンと触れた。



「すぐ目が慣れるさ・・・ ゆっくりで良い・・・ こっちだアヤ」
「ま、みゃってよ みゃお! みゃだ、みえみゃいぃ――っ」
泣きべそかきそうになった。 どうしよう・・・見えない・・・ 怖い!!
マオの尻尾はまだ僕の頭の上にある。・・・僕の動きを待っているかの様に。




徐々に目が慣れてくる・・・薄っすらと・・・洞穴の中の様子が見えてきてホッとした。
「みゃ、みゃおっ みゃってぇ・・・僕を置いてかみゃいでぇ・・・」
「あぁ、わかってる・・・  アヤ、大丈夫だから・・・  さぁ、おいで」




マオは器用に僕の頭を尻尾で撫でる。 マオの愛を感じた。 家族に対する愛かな・・・
僕に対して恋愛感情を、もってくれるはず無いけど・・・
胸が締め付けられた・・・あぁ、僕 また恋してるんだ・・・マオに。


城の妻なのに・・・ 僕・・・ 黒瀬の事だって・・・ 今度はマオか・・・
恋する気持ちを持つのは・・・浮気なんだろうか・・・ ううん、そうじゃないよね。


清い関係で居たのなら、恋は森羅万象のエネルギーに通じるんだと僕は思うよ・・・城。
だから、許してね。 僕の恋する気持ち・・・抑えなくても良いよね。
精神的な安らぎと・・・ 愛情と・・・ そして・・・ 思いやる心・・・


ゆっくりと、僕は歩き出した・・・足が震える・・・時々躓きながら・・・用心深く歩いた。





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アヤはマオと一緒に、保猫園のある岩山の、洞穴のトンネルの中にいた。


保猫園に着いたら・・・マオと会えなくなっちゃうのかな・・・
不安と、一緒に居たい気持ちに 押し潰されそうになる。
僕・・・ 僕・・・マオと居たい・・・だけど、それは わがままだよね。
マオに守ってもらう事、考えてちゃいけないんだ。


いつか、肉体的にも精神的にも・・・マオと肩を並べられる位に成長して・・・
胸を張って、マオに好きだと言える様になるんだ。
僕の目標は決まったよ、城。 マオに追いつく事だ。 うん。 僕、頑張るからね。




先程までの、胸の重苦しさは嘘のように消えた。
尻尾をピンと立てて、僕は洞穴の中を歩く。


僕のスピードに合わせて、マオも歩いてくれている。
あ、そうか・・・道案内だよね・・・今頃気付いた。


洞穴の中は、入り組んでいて、迷路状態だ・・・覚えなきゃいけなかったのかも・・・
あー・・・今更無理だし・・・ ま、途中からでも記憶しなきゃ。
僕はあたりを見渡しながら用心深く歩く・・・





明かりが漏れていた・・・
保猫園の入り口だ。
マオは僕を振り返り、なかなか中に入ろうとしない僕の後ろに着くと、中に押し込んだ。


「みゃ、みゃおっ!!」
僕は体をマオに擦り付けた。 離れたくないのに・・・


マオは、優しく僕の顔を舐めると・・・
「さぁ、アヤ 行くんだ。 何、永遠の別れって訳じゃない。 キルが待ってる 行くんだ」


「みゃっ、みゃおっ!!」
僕も、マオの顔を舐めた・・・ 僕・・・ 僕・・・ 頑張るから・・・ 僕、マオが大好きだよ・・・




別れの挨拶をして・・・マオは暗い洞穴の中を引き返していく・・・
マオが角で見えなくなって・・・僕は明るい部屋の中へ入っていった。




アヤが、部屋の中に入ったのを洞穴の大岩の影から、マオは見守っていた。
「アヤ・・・ 元気でな・・・」


俺は後ろ髪をひかれる思いで・・・回れ右をした。
進むスピードが自然と遅くなる・・・ アヤと離れたくなど無い・・・ けど俺は・・・
思いを振り捨て、俺は前を向いて歩き出した。


洞穴を抜け、岩山を駆け下り草原へ出た。
鳥人、翼を持つ犬の襲来といい・・・時間が無い・・・
俺も早急に次の段階へ進まなければ・・・ 恋に身を焦がしている場合じゃないんだ。


前方から、影が近付いてくる・・・白い影だ・・・  ナギか!!
俺は真横に飛びのいた。 一瞬後そこに水柱が立つ!!
走るスピードを速め、意識を集中して、俺は気合を込めて風を放った。
ナギも空気の刃を難なく回避する。
ナギは卒業をかけての試験の最中か・・・だが早々に、やられるつもりなど無いぜ!!




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